正平調

時計2019/08/31

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「赤毛のアン」などの翻訳で知られる村岡花子は、当時5歳の長男道雄を病のために亡くしている。悲痛な詩がある。〈そのひとりあればまひるのかがやき/そのひとりあらずばぬばたまの闇/いみじくも貴きそのひとりよ…〉◆花子の孫である村岡恵理さんの著「アンのゆりかご」(新潮文庫)から引いた。この夏、「京都アニメーション」の放火殺人事件で命を奪われた社員35人の人となりを記事で読むたび、その一編が思い出された◆若い制作者もベテランも、家族や友人にとってはすべての人が「そのひとりあれば真昼の輝き」、無二の存在であったに違いない。さらには、多くのアニメファンの心をどれだけ強く明るく照らしてきたことか◆「親孝行だけをして逝ってしまった」。31歳の息子を失った父親の言葉が胸に残る。「息子には名前がある」「『石田敦志』というアニメーターが確かにいたということをどうか、どうか忘れないでください」◆花子はのちに自宅にあった本を並べてささやかな家庭図書館とし、地域の子どもたちに開放した。逝きしわが子が好きだった絵本には「道雄文庫」と、そう判を押して◆アニメにかけた35人の夢と情熱は作品とともにいつまでも語られるだろう。一人一人の貴き名を忘れまい。2019・8・31

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