正平調

時計2019/09/02

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胸まで伸びた白いあごひげをなびかせながら長身の老人が走ってやってくる。周囲はだれも偉い先生だと気付かない◆「走る学者」のエピソードで語り継がれる宇沢弘文さんは生前「ノーベル経済学賞に最も近い日本人」と目されていた。鳥取県に生まれ、抜群の数学の才能で東大数学科に進むも「社会の病気を治したい」と経済学を志した◆渡米して成長理論で業績をあげ、ソローやスティグリッツら名だたる経済学者に影響を与えた。帰国後、書斎を飛び出し、経済成長の「影」といえる水俣(みなまた)病や大気汚染、自動車公害と向き合った◆「人間が人間らしく生きていける社会の器が要る」。自然環境やインフラ、金融、教育、医療を経済学でとらえ直し、「社会的共通資本」いう概念を唱えた。「市場は万能」という言説への対抗軸だった◆阪神・淡路大震災で高速道路が倒壊した際、路面電車が走る人間サイズのまちづくりに期待した。しかし効率最優先で高速道路は当たり前のように再建された◆資本の論理を制御することは有事ですら難しい。ジャーナリスト佐々木実さんが600ページを超す評伝を出した。タイトルがいい。「資本主義と闘った男」。18日で没後5年。激動期を駆けた学者は今ならどんなメッセージを出すだろう。2019・9・2

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