正平調

時計2019/09/06

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池内紀(おさむ)さんは謎めいた小説が多いとされるフランツ・カフカについて、自ら訳した短編集のなかでこう評している。「見る位置によって形の変わる不思議なだまし絵とそっくりである」◆また「日本文学100年の名作」(新潮文庫)の編者として、井上ひさしさんの作品を紹介していうには「セツなくておかしい。おかしくてセツない。まさしく井上ひさしのひとり語り…」。名調子が心地よい◆書店や図書館で本を選ぶとき、訳者や編者の名はあまり気にとめないが、改めて見てみれば、その人の分かりやすい解説に随分とお世話になっていたらしい。姫路市出身の文学者、池内さんが78歳で亡くなった◆20代のころに執筆した神戸新聞の「随想」が“デビュー作”だったと、のちに振り返っておられる。原稿料というものを初めてもらって、ホテル屋上のビアガーデンで生ビールを飲んだことが忘れられない、と◆文学のみならず歴史、旅、グルメなど著作は多方面にわたった。いくつもの顔を持った「不思議なだまし絵」と重なるようでもある。背表紙に名がなくても、巻末解説でひょっこりお目にかかることも多かった◆恐らく書棚のどこかに隠れて、その人がまだいるような。秋の夜の“再会”を期待して、ゆっくり探そう。2019・9・6

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