正平調

時計2019/09/07

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朝日を浴びて、トンボは歌う。〈暖かい靄(もや)と風と流れと/つばさにあたる日光と/心にみちるよろこび/ああ、わがいのち長からず/黄金の夏よ、多謝す/いみじきは今日のこの日〉◆ミツバチの子の冒険物語、ボンゼルス著「蜜蜂マアヤ」(岩波文庫)に、その歌は出てくる。限りのある命だからこそ、きょうという日を生きる喜びがある。それなのに、この女児の孤独と絶望は何なのだろう◆両親の虐待でわずか5年の生涯を閉じた船戸結愛(ゆあ)ちゃんの、母の裁判が続いている。記事から知れるのは、父の暴力によって命が細りゆくなか、恐らくは最後まで母を信じてすがり、生きようとした日々である◆検察によれば、1日に汁物が1、2杯しか与えられず、亡くなったときの体重は12キロと同い年の平均である20キロからほど遠かった。「あばら骨が浮くくらいやせていた。凄惨(せいさん)だった」。消防隊員は証言している◆暖かい靄と風と流れと、日光と-。本当であれば、親からの愛情を一身に浴びるはずの年頃である。地獄のような毎日で「もうおねがい ゆるしてください」とノートに書き残した女児がかわいそうでならない◆自らを励ましたか、そのノートにある。「えいえいおー」。母は法廷で泣き崩れたが、小さな命は戻らない。2019・9・7

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