正平調

時計2019/09/20

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女の子の作文がある。兄の机を拭いていた母が金魚鉢を落として割ってしまった。「もっと気をつければよかった」。母が謝ると兄は言ったという。「端っこに置いていた僕が悪い」◆女の子が勇気を出して伝えた。「実は危ないなと思っていた。言わなかった私が悪い」。最後に父が「丸いのでなく、四角い金魚鉢を買っておけば」と反省し、作文は終わる。うちの家はいつもこうなんですと◆原発事故のあと、福島県飯舘村の菅野典雄村長が広報誌のコラム「こころのぽけっと」でこの作文を紹介している。避難が長引いて、何かとささくれ立つ心を互いにいたわり合いましょう、そう呼びかけていた◆「もっと気をつければよかった」。あるいは「危ないな」。本当にだれ一人として、そう考えなかったか。判決が出たあともなお、そのもやもやは消えない。東京電力の旧経営陣3人に「無罪」が言い渡された◆原発事故対策を怠り、多くの人を死亡させた罪に問われた裁判である。あんな大津波はとても予想できない、とする3人の主張に判決はほぼ沿った。そうだとしてもやはり、事故は防げなかったかと疑問が残る◆事故で強いられた過酷な避難行で、力尽きていった命がある。「仕方がなかった」ではだれも浮かばれない。2019・9・20

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