正平調

時計2019/10/21

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福崎町にある應聖寺(おうしょうじ)は「沙羅(さら)の寺」として知られる。平家物語の冒頭で盛者必衰の象徴としてうたわれたように、咲いたその日に落ちてしまう一日花だ◆美しくもはかないこの花をこよなく愛したのが、先月亡くなった俳人の伊丹三樹彦さん。境内には3基の句碑があり、6月に出版した句集「俳句納経應聖寺」が生前最後の著作となった◆〈沙羅と立つ わが重心の置きどころ〉〈一日一生の句を作(な)せ 沙羅の花〉〈一の夢 二のゆめ 三の夢にも 沙羅〉…。好きが高じて本堂に泊まり込み、夜通し落花の音に耳を澄ますこともあったらしい◆應聖寺にはかつて、樹齢300年といわれる沙羅の大木があった。20年余り前にその生を全うしたが、今ではその子や孫にあたる約200本の木々が、初夏になると競って見事な花を咲かせる◆季語にこだわらず、現代語で分かち書きにするなど、俳句表現に新風を巻き起こした伊丹さん。押しも押されもせぬ俳壇の重鎮だったが、人懐っこい笑顔の周りには自然と人が集まった◆名木の命は花々に継がれ、俳人の志は弟子たちが新たな作品に結実させるだろう。伊丹さんが最期に残した句は〈誰とでも話したかった この世を去る〉。人を愛し、俳句を愛した99年7カ月の大往生だった。2019・10・21

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