正平調

時計2020/01/23

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その精神科医の訃報は2000年12月の紙面に載った。安克昌(あんかつまさ)さん。39歳。「阪神・淡路大震災被災者への心のケア研究で知られ、著書『心の傷を癒(いや)すということ』でサントリー学芸賞」と◆この書名と同じ題のドラマがNHKで始まった。モデルは安さんだ。見ながら、被災者に寄り添い続けた日々を思う◆震災時は神戸大付属病院の勤務医だった。著書で読んだ患者の話が印象深い。猛火から逃げる途中、「助けて!」という叫びが聞こえたが、足は止まらなかった。あの叫び声が今なお耳元で響くと、女性が訴える◆同じ被災地にいても、同じ体験をしたわけではない。「分かりますよ」と言った途端、うそっぽくなる。言葉を挟まず、ひたすら話を聞いた。そして、春。診察室へ入ってきた彼女は少しおしゃれをしていた◆避難所でも耳を傾けている。ここでも質問はせず、話をじっくりと聞いた。そんな体験を重ね確信したことがあると、取材で語っている。それは、誰かがそばにいること、話を聞いてくれる人がいることの大切さ◆神大の師である精神科医中井久夫さんが、安さんを含め、難事に活躍し、没した医師の話を本紙への寄稿で触れていた。「紙の記念碑」と形容して。それにならって、小欄を安さんへの紙碑(しひ)に。2020・1・23

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