正平調

時計2020/01/24

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ある詩歌集で、次の句を見つけた。〈忘れ来しところにありし冬帽子〉(岩田由美)。忘れものを取りに戻ると、忘れたときのまま置いてあった。時間がそこだけ流れなかったように-◆置き忘れた他人の帽子を見たときは、考える。だれのだろう。いつ忘れたのだろう。使い古してあるからお気に入りでは…と余計なことも。遺物からあれこれ想像すること、これすなわち考古学の始まりである◆きのうの本紙にかわいらしい土偶の写真が載っていた。神戸市西区の弥生時代前期の集落跡から見つかったという。祭祀(さいし)などに使われた土偶は縄文期に多く作られたが、弥生人にもしばらく引き継がれたらしい◆縄文の土偶といえばゴーグルをかけたような派手な顔立ちの、宇宙人にも似たあの姿がまず思い浮かぶ。対して、今回出てきたのは目も口も鼻も控えめの“のっぺり顔”。弥生人の特徴をよく表しているそうだ◆暗い土のなかに2千年以上も埋もれていた遺物が、タイムトラベルをしてひょっこりと現代に顔を出す。わたしを作った弥生人はどんな暮らしをしていたでしょう? 旅の道連れに、そんな歴史の問題を携えて◆長い眠りから覚め、まぶしげに目を細めているふうでもある。その小さな口で、遠い昔の何を語るだろう。2020・1・24

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