正平調

時計2020/01/28

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歌人の若山牧水が山の旅を詩に詠んだ。その一節にある。〈長かりしけふの山路/楽しかりしけふの山路〉(「枯野の旅」)。長旅の途中で、ふと絶景に出合ったかのような趣がある◆大相撲初場所で初優勝した徳勝龍関も、もしかしたらその心境に近いのかもしれない。西前頭17枚目。幕内最下位の力士が賜杯を手にするのは20年ぶりという。はるか遠くに見えた山の頂に気づけば立っていた◆この1年の番付は、幕内の下位や十両の上あたりを行きつ戻りつしている。33歳。角界のベテランにとっては決してなだらかでない、でこぼこ道をひたすらの稽古で踏み固め、歩んできた長い山路であったろう◆「自分なんかが優勝していいんでしょうか」。笑いあり、涙ありのインタビューでまずおどけてみせた。その人でしか口にできないせりふに万感の思いが満ちあふれている。ぐっときたファンも多いに違いない◆2人の横綱が序盤で休場し、今場所の盛り上がりはどうかな…などといらぬ心配をしていた。わびなければなるまい。高いところで咲く花だけが花でない。巨岩のあいだから芽をふく美しい花もあると教わった◆〈あをによし奈良の都は咲く花の匂ふがごとく今盛りなり〉。歓喜の奈良出身力士に万葉集の一首を重ねる。2020・1・28

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