正平調

時計2020/03/09

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「震災はなぜ、詩を呼び覚ましたのか」。神戸文学館で行われた講演会で、詩人時里二郎さんはこう切り出した。確かに25年前、被災地ではしきりに詩歌が詠まれた◆犠牲者6434人。家族や友達、仕事仲間がいっぺんにいなくなった。彼らは一体どこへ。「死者の魂に呼びかけ、会話するために詩の言葉はある」と時里さんは言う◆東日本大震災の後は怪談が盛んに語られた。東北怪談同盟編「渚(なぎさ)にて」(荒蝦夷刊)には、不思議な体験談があふれている。死んだと気付かず釣り糸を垂れている人、部屋の片付けに帰ってくる母親、キャッチボールを続ける兄弟…。霊たちの振る舞いは穏やかで懐かしい◆津波に幼子をのまれた父親はつぶやく。「アイツが幽霊になってるならうれしいよ。会いでぇよ。幽霊でも怨霊でも祟(たた)りでも、皆この町に居ればいい」◆震災に限らず、死はしばしば理不尽だ。突然の別れは受け入れがたい。そんな過酷な現実を乗り越える手だてとして、詩であれ怪談であれ、人は言葉をつむぐのだろう◆でも言葉でつながるのは亡き人とだけではないはず。戦災をくぐり抜けた神戸の詩人が詠んだ一節が浮かぶ。〈向(むか)いあいのあなたとわたし/しゃべりつづけて生きましょうよ〉(竹中郁「桃・麦・あなた」)2020・3・9

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