正平調

時計2020/03/23

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170年ほど前に書かれた手紙が見つかったと6日の本紙西播版が伝えている。播州田原村(現福崎町)に住んでいた女性が、地元の大庄屋に宛てたものだ。筆者は松岡小鶴。民俗学者柳田国男の祖母である◆内容はユニークそのもの。「ナメクジを美しい言葉に言い換えるには」と尋ねる。「蚰蜒(ゆえん)」などと教わり、心情を代弁する漢詩を作った。好奇心の強さと、まなざしの優しさがにじむ◆ナメクジは古来、嫌われ者の代表格。清少納言は「いみじうきたなきもの」と切り捨てた。一方でファンもいる。芭蕉に師事した内藤丈草は出家の際に「ナメクジになり自由を得た」とつづった◆カタツムリと違い殻を持たない身軽さに、一定の支持があるようだ。「ナメクジの言い分」の著者足立則夫さんは支持者の共通点に旺盛な好奇心を挙げる。シングルマザーだった小鶴も一人息子を育てつつ、大量の本を読み近隣の子女を教えた◆その気質は国男にも引き継がれる。官僚の出世コースを歩みながらも強烈な探究心を胸に道からそれる。村々を巡り口承に耳を傾け、民俗学の礎を築いた◆小鶴の手紙を研究する井上舞・神戸大大学院特命助教は2人の共通点に「独学の力」を挙げる。国男もナメクジの自由な境涯に共感しただろうか。2020・3・23

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