正平調

時計2020/03/28

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分かる言葉がまるでない。一日にわずか一文。それでさえ困難を極めたという。江戸中期、西洋医学書「ターヘル・アナトミア」の翻訳者の一人、杉田玄白が苦労話を書きとめている◆とりわけ、鼻は「フルヘッヘンドせしものなり」とあるのはどういう意味か、難儀したらしい。類推を重ねて「堆し(うずたか)」、つまり「隆起」の意に訳すこととした。日本近代医学の夜明けは、翻訳なくして語れない◆「クラスターの発見」「オーバーシュートを起こしかねない」「ロックダウンを避けるため」。耳慣れぬ人にとって、その分かりにくさはフルヘッヘンドと大差なかろう。新型コロナウイルスをめぐる政府や専門家の説明には、確かに片仮名用語が多い◆クラスター(感染者集団)。オーバーシュート(爆発的患者急増)。ロックダウン(都市封鎖)。覚えてしまえばそれまでだが、あえて使うべき理由もなさそうである◆片仮名用語と日本語、どちらが正しいというのでもない。例えば「ハザードマップ」を「危険地図」と訳せばどうか。原発事故の「メルトダウン」と「炉心溶融」では、受ける印象が随分変わるのも事実だろう◆いずれにせよコロナ対策の課題はフルヘッヘンド…もとい、堆し。行政にはより分かりやすい説明を願おう。2020・3・28

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