正平調

時計2020/05/18

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「おしょうしな」。感謝の気持ちを示す山形弁だ。作家の井上ひさしさんの生まれ故郷、山形県川西町で初めて聞いたとき、優しい響きが胸に染みた◆人口1万5千人弱の小さな町に大きな図書館がある。井上さんが執筆に使った膨大な蔵書や資料を町に寄贈し、1987年にオープンしたのが「遅筆堂文庫」だ。筆が遅いことで有名だった作家自らが名付けたという◆「当文庫は、有志の人びとの城砦(じょうさい)、陣地、かくれ家、聖堂、そして憩いの館なり」。丸文字風の直筆で書かれた「遅筆堂文庫堂則」が、入り口に掲げられている◆先月9日で没後10年になった。代表作にちなんで毎年、人と作品を語り継ぐ文学忌「吉里吉里(きりきり)忌」が営まれてきたが、本年はコロナ禍で延期になった◆図書館業務はどう対応してきたのだろうと尋ねてみた。今月上旬ごろまで臨時休館している間、電話などで予約を受け付け、玄関先のテーブルに本を置いて非対面で貸し出したという◆ステイホームだからこそ本の世界に浸りたい。感染防止に配慮しながら市民の希望に応えるのは町の懐の深さを示すようだ。兵庫県では相生市立図書館が本の宅配サービスを行っていた。予約すると自宅に本が届く。井上さんなら「おしょうしな」とほほ笑むことだろう。2020・5・18

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