正平調

時計2020/06/14

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京都・八坂神社に句碑がある。〈東山回して鉾(ほこ)を回しけり〉。祇園祭の山鉾が、巨体を左右に揺らしながら辻を回る。あの光景を詠んだ句である◆このほど103歳で亡くなった神戸の俳人、後藤比奈夫(ひなお)さんの代表作だ。自分が鉾に乗り、辻回しの指図をする。そんな気分を表したそうだ。大学で物理を学んだ方らしい理知的なまなざしを感じてしまう◆ところが、権威のある蛇笏(だこつ)賞を受けた句集「めんない千鳥」はずいぶん違う。漂うのは理知ではなく情愛である。ご自身が入院していた間、愛妻が病に倒れ、亡くなったのだ。深い悲しみが句に情けを盛った◆たとえば〈手をつなぎやりたやお花畠見ゆ〉、あるいは〈亡き妻を探しにきたる初雀(すずめ)〉。きれいな花だねと、手を取り合った人はもういない。庭の雀を見ても思い出すのはあなた。切ない思いが作品からしたたる◆後にいろんな場で心境を話した。つなげば、こうなる。これまではものごとを冷静に見ようとした。でもつらいことが重なり、俳句が素直になった。いま、大切に思うのは温かい心、と。五七五に人生が宿る◆句集の題名は目隠しの鬼ごっこ遊び。〈妻とするめんない千鳥花野みち〉。幼なじみの夫婦だったそうだ。今ごろは、お二人で興じているかもしれない。2020・6・14

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