正平調

時計2020/06/19

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人生、何がどうしてそうなるか分からない。村上春樹さんが若き日を振り返っている。1978(昭和53)年春、ひいきにしているプロ野球ヤクルトの開幕試合を神宮球場で観戦

した◆バットがボールをとらえる小気味のいい音がして、ヤクルトの先頭打者が安打を放った。「そうだ、僕にも小説が書けるかもしれない」、何の脈絡もなく思い立ったと著書「職業としての小説家」に書いている◆試合後に万年筆と原稿用紙を買い、半年かけて書き上げたのがデビュー作「風の歌を聴け」である。プレーボール直後の快音に何かしらの始まりを感じて…とはまるで青春小説のようで、いかにもその人らしい◆心の梅雨空を晴らす快音が聞けるといい。プロ野球がきょう、3カ月遅れで開幕する。テレビやラジオでこれまでに何百試合、また何千試合と観戦してきたファンにとっても、忘れがたい一戦となることだろう◆のちの余談が作家、丸谷才一さんの回想にある。丸谷さんが村上さんに話しかけた。「ヤクルトが負けた日の球場で小説を書こうと思ったというのはいい話ね」。村上さんは答えたという。「勝った日ですよ」◆勝つとか負けるとか、それもまた大事。好きなチームの勝敗に笑う。嘆く。怒る。そんな日常がいとおしい。2020・6・19

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