正平調

時計2020/06/21

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絵本作家の佐野洋子さんが幼いころの父の思い出をエッセーに書いていた。風呂に入った時、まだ力のない彼女に代わり、タオルをギュッと絞ってくれた。やせて「太い血管がのたくって」。そんな手が忘れられないという◆亡くなって久しいのだが、自分の手を見ているとよみがえる。父の爪は根元の白い半月部分がほとんどなかった。あらためて見ると、そっくりである。そしてなにより、自分の手も同じように血管が浮き出ている◆ずいぶん前、本紙のくらし面「ふれあい」欄で読んだ話。自分の手は小さく、いやだなあと思っていた。ところが病床の父をさすりながら、初めて知った。これは「父譲り」だと。この手で家族を支えた。いやだった手が好きになったと、投稿を結ぶ◆娘であれ息子であれ、どこかに父が宿る。年齢を重ねると面影が浮かびもする。久しぶりに会った幼なじみが、その人の父の印象と似てきたのに驚いたことが何度かある◆今日は「父の日」。「母の日」と比べ、どうしても存在感では劣る。かつて大手スーパーの宣伝ポスターに「去年の父の日は終わってから気がついた」というのがあった。だから早めに贈り物をということか◆それもいいけれど、ちょっとその手を思い出してみたい日でもある。2020・6・21

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