作曲家の早坂文雄さんは黒沢明監督の作品づくりにかかわったことでよく知られる。「羅生門」「生きる」「七人の侍」などを担った。41歳で亡くなったとき、黒沢さんはこう嘆いた◆「二人で一生懸命にガチャガチャやって、やっとここまで来たんですよ。その一人が急に死んじゃって、この穴は十年埋められない」。映画評論家の日野康一さんが「七人の侍」のパンフレットに書いていた◆音楽が伴奏で終わってはいけない。映画とは監督と音楽家が一緒になってつくるもの。意見をぶつけ、ああだこうだとガチャガチャやって…というなら、この方も際立つ個性の監督たちとそうやって銀幕と闘った◆イタリアの作曲家、エンニオ・モリコーネさんだ。たくさんの思い出を残し、91歳で亡くなった。手がけた映画音楽は400を超す。訃報記事に主な作品が載っていた。感慨深くご覧になった方は多いだろう◆マカロニウエスタンでは口笛や民族楽器がかっこよかった。「ニュー・シネマ・パラダイス」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」から流れたメロディーは心にしみいった。聞くだけで場面が浮かぶ◆大事にしていることを問われ、答えている。「実験すること」。80歳ごろのインタビューだ。心が老いない。2020・7・12
