正平調

時計2020/07/19

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「日本文学振興会ですが」で電話は始まる。「ただいま選考がありまして、あなたが…」。そして「1時間後に記者会見に応じていただきますが、よろしゅうございますか」と続く◆芥川賞、直木賞の選考結果を伝える電話である。この会の事務局長を長く務め、受賞者への連絡役を担った高橋一清(かずきよ)さんの著書からお借りした。吉報と分かり、電話口の向こうで大歓声が起きることもあるそうだ◆第163回は芥川賞2人、直木賞1人となった。選考委員をうならせた作品の中身が一番の関心事だが、ひそかな楽しみがもう一つある。人生を変える一本の電話を、どこでどんなふうに待っていたかである◆第99回芥川賞の新井満さんは、待つ時間がいやで、山手線に乗った。携帯電話のないころだ。ホームでふと電光ニュースの速報を見上げ、自分の名前が流れているのを知ったという。まるでドラマの一場面である◆「少年と犬」で今回の直木賞を射止めた馳星周(はせせいしゅう)さんは、故郷・北海道浦河町の居酒屋で電話を待った。知り合いに囲まれて。「一生懸命に小説と向き合ってきたから」という一言に、待った年月の長さが宿る◆選に漏れた人の声は、短く、重いそうだ。「分かった」とか「そう」とか。電話が織りなす模様もまた、物語。2020・7・19

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