正平調

時計2020/07/22

  • 印刷

作家の北杜夫さんが歌人の父、斎藤茂吉の食いしん坊ぶりは「相当なものであった」と回想している。隣の人のコイ料理を自分のと見比べて、「そっちのほうが大きいから、そっちを頂戴」。そう言って交換してもらったとか◆茂吉の大好物はウナギだった。缶詰の場合はふたを開けて、まず覆いのセロハンをなめる。それからかば焼きの切り身を惜しみつつ味わうのだが、北さんがもらったのはいつも一片だけ。ケチでもあったらしい◆土用の丑(うし)のきのう、香ばしげに煙をあげてウナギが焼かれるテレビ映像を横目に、林谷廣(はやしやひろし)氏の著「文献茂吉と鰻(うなぎ)」を読んで驚いた。日記などの記述を数えるだけで茂吉は約900回、ウナギを食べているという◆戦中はさすがに食糧不足で、外食で口にする機会は減った。そのころの一首。〈開帳のごとき光景に街上の鰻食堂けふひらきあり〉。たまにありついたウナギ料理を秘仏開陳のありがたさでいただいたのだろう◆今年はニホンウナギの稚魚が久しぶりの豊漁で、いくらかの値下げも期待されている。とはいえこのままでは絶滅の恐れがあり、それなりに値の張ることは変わらない◆たまの“ご開帳”を拝んでいただくからこそ増す喜びもあろう。茂吉の一首を慰めとし、そのときを待たん。2020・7・22

正平調の最新
もっと見る

天気(9月19日)

  • 27℃
  • 23℃
  • 10%

  • 26℃
  • 19℃
  • 20%

  • 29℃
  • 23℃
  • 10%

  • 30℃
  • 22℃
  • 10%

お知らせ