正平調

時計2020/07/31

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「はだしのゲン」の漫画家、中沢啓治さんは広島の原爆で父、姉、弟を亡くした。1966(昭和41)年の母の死後、原爆の非道を初めて漫画で訴える。「黒い雨にうたれて」である◆「反米色が強い」と出版界が尻込みするなか、あるコミック誌での掲載が決まった。「CIA(米中央情報局)に捕まってもいい」との覚悟に、編集長がこたえてくれたという。「そのときは一緒に捕まろう」◆被害の実相や悔しさをありのまま世に伝える。そのことにどれだけの勇気がいったか。中沢さんの挿話はきっと一つの例にすぎまい。「黒い雨にうたれた」「私も被爆者だ」。覚悟の訴えが報われる判決だろう◆原爆投下直後に降った「黒い雨」をめぐる訴訟で、国の定めている区域外でも健康被害はあったとして、原告84人の救済を広島地裁が認めた。「ようやく…」という原告のうれし泣きに戦後75年の実感がこもる◆どうしてだろう、漫画「黒い雨にうたれて」に雨の描写や説明は出てこない。「わしら原爆をうけた者は地獄だぜ」「真剣に考えてくれる奴がいるか 原爆の苦しみを」。あるのは怒り、悲しみのせりふである◆差別も、そして無関心も被爆者を苦しめる“黒い雨”なんだ-中沢さんはそう伝えたかったのかもしれない。2020・7・31

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