正平調

時計2020/08/01

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作家の陳舜臣さんが本紙に寄せた回顧録に「古本屋五人」という話があった。終戦後のいっとき神戸を離れて台湾に暮らしたころ、知り合いに古本屋を始めようとする若者たちがいた◆いずれは出版社にして、台湾文化を高めていこう。そんな純粋な思いも当時の国民党政権には危険に映ったのかもしれない。2人が銃殺されたという。かくまわれ生き残った1人が李登輝氏、のちの総統である◆はじめは「ちょっと堅苦しいくらいまじめで、融通が利かない」と陳さんには感じられたが、政治家となった友人はさにあらず。その柔軟性、粘り強さに驚いたそうだ。李氏が激動に満ちた97年の生涯を閉じた◆とても親日家で、ニュースで顔を見かけるたび、やわらかな笑みをたたえておられたが、その大きな体には鋼鉄の意志が秘められていたのだろう。民主化を推し進め、統一を迫った中国に対してもひかなかった◆日本では「昭和」が、世界では冷戦が終わったのに、台湾では戦後が終わらない。台湾の歌人、孤蓬万里(こほうばんり)さんは「台湾万葉集」にそうつづり、一首を添えた。〈独立も統一も夢蓬●の民に幸福何時なむぞ来る〉◆蓬●(台湾)の「夢」はこれからどこへ向かうのか。李氏の足跡をアジア史にたどり、その現在地をはかる。2020・8・1

(注)●は「莱」の「来」が「來」 

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