正平調

時計2020/08/09

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「戦艦武蔵」「深海の使者」などの戦史小説を書いた吉村昭さんは、戦後30年目ごろで戦記をやめた。あらがいようのない壁に突き当たったからだ◆潜水艦を舞台にした「深海の使者」では、事情を知る192人に会い、話を聞いた。しかし2年後、うち24人が亡くなっていた。戦争の真っただ中にいた当事者から話を聞くのは難しくなる。そう思ったからと、「文芸別冊」の特集で打ち明ける◆記録より証言に重きを置き、史実を確かめるのに複数の人に会う。厳格な流儀を貫いた作家にとって、戦中派が老いていく戦後30年というのは大きな壁だった。そして、ことしは戦後75年。壁はますます高い◆父の苦しみを語り継ごう。そう決心した62歳の男性の話を長崎新聞で読む。長崎で被爆した後、彼の父は炭鉱で働いた。原爆で健康を損ね、貧しかった。亡くなった後、原爆について語った父の証言集を手にした◆被爆、病気、貧困、差別…。つらい体験を伝えたいと思った。長崎には「家族証言者」という制度がある。亡くなった被爆者に代わり家族が語る。福岡に住む男性は長崎へ通い、「家族証言者」の研修を重ねる。父から子へ。静かに胸を打つ話である◆長崎はきょう、原爆忌。時の壁を背に語る姿が、きっとあちこちで。2020・8・9

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