正平調

時計2020/09/16

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三井住友銀行の頭取室には作家山崎豊子さんの著作が並んでいた。西川善文さんが合併後初代頭取の頃だ。「衝撃を受けた」と評価したのは金融界を描いた名作「華麗なる一族」だった◆頭取という肩書の前にはさまざまな言葉がつく。豪腕、カリスマ、カミソリ…。小説の主人公の頭取は極めて冷徹で、大手行との合併を狙ってあらゆる策謀を巡らせる◆対照的に西川さんは大阪弁でいう「いらち」だった。若いころから打って出ることを好んだ。安宅産業の破綻処理や平和相互銀行合併、イトマン事件といった住友銀行の屋台骨を揺るがす難局で果断に行動した◆異色の経歴だった。営業を経験した期間は短く、花形の海外支店長も務めていない。「平時ではない時代の最後のバンカー」として「ラストバンカー」を自認していた◆頭取在任の1997年から2005年、日本経済は苦境にあった。バブル崩壊に伴う不良債権は処理を重ねても際限なく増殖した。経済の血流は滞り、破綻が相次いだ◆「悲観論では始まらない。時代に合ったビジネスモデルを生み出す」。財閥の枠を超えたさくら銀行との合併では仕事師の胆力が光った。来年4月の合併20周年を見届けることなく82歳で逝った。最後の頭取に胸の内を聞きたかった。2020・9・16

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