現れるのがハラハラドキドキの場面だからだろう。ゲーム終盤、マウンドに立って反撃を断つリリーフや抑えの投手にはよくニックネームがつく◆V9時の巨人のリリーフエースは「8時半の男」と呼ばれた。この時刻によく登板したから。「炎のストッパー」がいたし「大魔神」もいた。鋭く曲がるスライダーを「死に神の鎌」と称された抑えもいる◆「火の玉ストレート」もプロ野球史に残る。今季で引退した阪神・藤川球児投手の剛速球のことだ。僚紙デイリースポーツを繰ってみると、紙面に初めて登場したのは2005年。ずいぶん長く愛されてきた◆回転数が多いから、浮き上がるはずのないボールが浮いてくるように見える。触れればやけどしそうな。どなたの命名か知らないが、うまいたとえだ。引退セレモニーのあいさつで当の本人も「ファンの熱い思いがすべて詰まっています」。これもうまい◆思い出す。13年前の中日戦。同点の最終回、2死二、三塁で迎えた強打者ウッズ選手には、すべて火の玉ストレートで挑んだ。かろうじてファウルでかわすウッズ選手は、一瞬、笑みを浮かべた。いい勝負になってきたと。そして11球目、中前へガツン。でも、打たれてもなぜか、満足できた◆思い出数々。ありがとう。2020・11・15
