正平調

時計2020/11/22

  • 印刷

「裸の島」という懐かしい映画がある。瀬戸内の小島に住む夫婦と子ども2人の暮らしを描いている。せりふが一つもない異色の作品だ。公開されてから明日でちょうど60年になる◆監督は新藤兼人さん。夫婦を殿山泰司さんと乙羽信子さんが演じた。ご覧になった方は多いだろう。長男の急死というつらい出来事があっても暮らしは変わらない。淡々と、でも張りつめた時間が島の中で過ぎる◆電気も水道もない。近くの島へ小舟で行き、水をもらう。その桶(おけ)を天秤棒(てんびんぼう)で担いで段々畑を上がる。監督は「しなる天秤棒が労働の象徴」とみたから、上げ底ではない。乙羽さんの肩の皮は3度むけたという◆設立した独立プロが財政的に行き詰まり、解散記念の作だったと、著書「生きているかぎり」にある。これが最後と思い切り自由につくった映画が、モスクワ国際映画祭でグランプリに輝いたのだからおもしろい◆著書からもう一つ。担ぎ上げた水を2人は畑に注いでいく。すぐ乾いてしまうのだが、それでもひたすら毎日注ぐ。「乾いた土とは、わたしたちの心である。心に水をかけるのだ。水はわたしたちの心の水である」。印象的な場面に大事なものが潜む◆紙面を繰っても、兵庫県内での再上映は数少ない。もったいないな。2020・11・22

正平調の最新
もっと見る

天気(1月24日)

  • 11℃
  • 8℃
  • 70%

  • 8℃
  • 6℃
  • 80%

  • 10℃
  • 8℃
  • 70%

  • 11℃
  • 8℃
  • 80%

お知らせ