正平調

時計2020/11/25

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作家の浅田次郎さんは高校を出たあと、陸上自衛隊に入隊している。前年秋、文壇のスターだった三島由紀夫が市ケ谷駐屯地で衝撃的な死を遂げた。いくら考えても理由が分からない◆「鬱々(うつうつ)と考えていても仕方がないので、とりあえず現場に行ってみようと思い立った」。この問題を解決しないと小説家を志す自分の未来もない-そう思いつめて入隊したと、浅田さんは自著で振り返っている◆異様な事件はいくつもの謎を残し、多くはいまなお謎のままである。1970(昭和45)年11月25日、三島は「楯の会」メンバーとともに訪れた駐屯地で自衛隊の決起を促し、受け入れられぬとみるや自裁した◆親交のあった劇作家、福田恆存(つねあり)さんの談話が当時の新聞に載っている。「全くわからない。私には将来、永遠にわからないだろう」。真相の手がかりを求めてか、書店の三島コーナーは人だかりができたという◆没後50年にあたる今年は映画が上映されたり、書籍が出たりと再びその人物像が語られる。半世紀前と同じく、作家の内面を知りたくて小説を手にした方もあるだろう◆例えば「仮面の告白」。例えば「金閣寺」。事件の記憶は古びても、まれなる美文といわれた三島文学は現在進行形のまま読者をひきつけてやまない。2020・11・25

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