どこで聞いたか、何で目にしたか。こんな言い回しがある。「口も濁れば愚痴になる。意志も濁れば意地になる」。口と愚痴、意志と意地。濁点があるかないかで、こんなにも違う◆後援会主催の「桜を見る会」夕食会の問題が再燃し、安倍晋三前首相の政治姿勢に濁点がつくかどうかの瀬戸際である。多弁がやがて愚痴になり、「問題はない」と言い切ってきた意地も心で膨らんでいるだろう◆でも誰が見てもおかしい。高級ホテルでの飲食代が1人5千円。これでまかなえないと思うのが普通だが、後援会は補填(ほてん)していないと安倍さんは言い張った。ではホテルの明細書をと求めても「ない」と言う◆告発を受けた東京地検特捜部の事情聴取で、ようやく疑惑の輪郭が見えてきた。安倍さんの側も一部補填を認めたようだ。ただし秘書の判断で。とかく政界の不祥事は「秘書が…」になりがちなのだが、またかとうんざりする。ここは特捜の意地を見たい◆昨日の紙面に、いい言葉があった。トランプ米大統領が敗北を認めず、政権移行への協力もしない。その姿勢にいら立って共和党の長老議員が言った。「国民は公職者の最後の振る舞いを記憶にとどめる」と◆最後かどうかはともかく、安倍さんの振る舞いも記憶にとどめよう。2020・11・26
