人とニワトリの付き合いは長い。例えば万葉集には〈暁(あかとき)と鶏(かけ)は鳴くなりよしゑやしひとり寝る夜は明けば明けぬとも〉とある。夜が明けたとニワトリは鳴いているようだが、勝手に明けたらいい、私は一人で寝ているんだし…◆「こっちは一生懸命、時を告げているんだぞ」とニワトリのぼやきが聞こえてきそうで愛らしい。それだけ親しみのある生き物だけに仕方のないこととはいえ、殺処分のニュースを耳にするたび切なく、つらい◆高病原性鳥インフルエンザが拡大の様相を見せる。香川県や福岡県に続いて、兵庫県でも発生した。淡路市の養鶏場で感染が分かり、約14万6千羽が処分されるという◆感染拡大の重要参考人は渡り鳥である。野鳥は海を越えて種子を遠くまで運んでくれるから植物にとってはありがたい旅人に違いないが、やっかいなことに時として彼らは災いの種をまく病原体の運び屋になる◆対コロナという先の見通せない闘いにただでさえ気が張っているさなか、突如降りかかった新たな災いに関係者は心の休まる間もないことだろう。見えない敵から家畜や暮らしをみなで守っていかねばならない◆まん延防止の徹底が急がれる。ウイルス禍という暗い夜が明けたと、その一声を人もニワトリも待っている。2020・11・27
