オノマトペ(擬音語、擬態語)について思い至ったある見解を、漫画家の東海林さだおさんがエッセーに書いていた。その多くは「マイナスの心情用に開発された言葉」ではないかと◆実際のところは分からないが、試しに泣く折の表現を挙げてみる。さめざめ、おいおい、めそめそ、わんわん…と限りがない。古来より、悲しい気持ちを表す擬音語に工夫が凝らされてきたのは確かなのだろう◆今後の国語辞典に載ってもおかしくないことを基準に選ぶ三省堂の「今年の新語」が少し前に発表された。「○○警察」「密」「リモート」といったコロナ関連語を抑えて、大賞になったのは「ぴえん」である◆鼻炎、ではない。小声で泣きまねをするような意味合いで「電車に間に合わない、ぴえん」などと使う。「わーん」の大泣きでもなく、「しくしく」のすすり泣きでもない。その中間にあるオノマトペだという◆語感のさえで世間の百歩先をゆく女子中高生やネットの世界では、より悲しい表現の「ぴえんこえてぱおん」、最大級の涙目状態「ぴえんヶ丘どすこい之助」が今年の流行だったとか。言葉の変幻は果てしない◆世に憂きことの多かった年の瀬である。ぴえん、で済むのならそれでいい。どすこい級の涙はもういらない。2020・12・16
