正平調

時計2020/12/17

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 「江夏の21球」はノンフィクション作家山際淳司さんの名作である。プロ野球の日本シリーズ最終戦、九回裏。緊迫の土壇場で、抑えの江夏豊さんが投げた全21球を読み解く短編だ◆この24分間に詰まる物語も負けない。注目を集めた柔道男子66キロ級の東京五輪代表決定戦のことだ。見ていて、思わずこぶしを握る長い戦いだった。しかも、勝った阿部一二三(ひふみ)選手の言葉を借りれば「濃かった」◆神港学園高時代から、押し込んで投げる柔道、切れ味の良さが身上だった。しかし今回の対戦相手丸山城志郎選手には、捨て身の技に屈したことが幾度か。そこで考えたようだ。耐えること。冷静になること◆そういえば、将棋の谷川浩司九段が書いていた。勝つために大事なことの一つは「焦らないこと」だと。「勝った!」と思って心が乱れると、逆転負けを喫する。だから優勢になったときに、「『早く勝ちたい!』という気持ちをどれだけ抑えられるか」◆決定戦に重ねれば、一瞬のチャンスを焦らずに待ったということだろう。指のけがで治療を受けた時間も、熱くなる心を抑える機会だったかもしれない。一つ一つの場面で何を思ったか、尋ねてみたいものだ◆短編の物語に題名をつけるならこれしかない。「阿部一二三の24分」2020・12・17

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