正平調

時計2020/12/21

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姫路市出身の作家車谷長吉(ちょうきつ)さんは、小説のモデルとたびたびトラブルになった。実体験を基に心境を明かす「私(わたくし)小説」が身上である。親類が口をつぐむ事情も容赦なく書いた。裁判もいくつか抱えた◆知人の編集者の私的問題を小説にさらしたこともある。「道義的に問題がある」と出版を断られると、何とこの編集者に持ち込み、雑誌に採用された。妻の詩人高橋順子さんは著書で「この人も鬼だ」とつづる◆書かれる方はたまらないが、書く方のストレスも強烈だ。幻聴や幻覚に苦しみ、姫路で開かれた車谷長吉展には防弾チョッキを着て臨んだという。限界まで自分を追い込むからこそ、言葉が力を持つに違いない◆ネット上の誹謗(ひぼう)中傷が大きな社会問題になっている。標的にされた女子プロレスラー木村花さんが自殺に追い込まれた。コロナ感染に関する心ないデマもあふれている◆感染拡大による閉塞(へいそく)感もあって面白半分に書き込むのだろう。名前をさらす必要はなく、相手の苦悩も見えない。だから攻撃はエスカレートする。提訴の動きを知ると、途端に謝罪するパターンが繰り返される◆語ることは自分を崖から突き落とすことだ。車谷さんはそう述べた。急死から5年。その言葉は一層重みを増す。小欄も自戒を込めて。2020・12・21

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