正平調

時計2020/12/26

  • 印刷

旧満州・ハルビンから大連に向かう引き揚げ列車はすし詰めで、屋根がない。月夜、停車した汽車で誰かがハーモニカを吹くのを当時8歳だった少年は聴いた。なかにし礼さんである◆流れてきたのは、ディック・ミネさんの「人生の並木路」だった。泣くな妹よ 妹よ泣くな/泣けば幼い 二人して/故郷をすてた かいがない-。車内全員の大合唱はやがて、むせび泣きに変わったという◆なかにしさんが“わが人生の歌ベストテン”の一曲にその歌を挙げて、終戦後の引き揚げ体験を著書につづっている。父をハルビンで亡くした自分もいつしか「泣きながら歌っていた」と。作詞家の原点だろう◆年も押し迫った今ごろに口ずさむなら、レコード大賞に輝いた「北酒場」か、あるいは歌詞に〈雪に埋もれた 番屋の隅で〉と出てくる「石狩挽歌(ばんか)」か。手がけた曲はおよそ4千。あの歌、この歌が思い浮かぶ◆恋歌という形をとりながら、曲に込めたのは満州への慕情であり、自らが生きた「昭和」時代への愛や憎しみであったと語っている。戦後歌謡界を彩り、作家としても活躍したなかにしさんが82歳で亡くなった◆今じゃ浜辺で オンボロロ(「石狩挽歌」)。名曲をさかなにグラスを飲みほして、昭和の残り香をかぐ。2020・12・26

正平調の最新
もっと見る

天気(2月26日)

  • 9℃
  • ---℃
  • 50%

  • 9℃
  • ---℃
  • 20%

  • 10℃
  • ---℃
  • 50%

  • 10℃
  • ---℃
  • 50%

お知らせ