正平調

時計2020/12/28

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〈生きている不潔とむすぶたびに切れついに何本の手はなくすとも〉。福崎町出身の歌人岸上大作が逝って60年が過ぎた。姫路文学館で開催中の回顧展では他の有名な歌でなく、この1首をチラシやポスターに掲げる◆国学院大学に在学中、安保闘争に身を投じた岸上は、学生歌人として一躍注目された。一方で自らの全存在を賭けた恋に破れ、21歳の若さでその命を絶った◆会場には、いまわの際まで書き続けた「ぼくのためのノート」全53枚が並ぶ。短歌作品以上に鮮烈で、岸上の最高傑作とされる絶筆だ。「おのれの純情に殉じるのだぞ」。その純粋すぎる死によって、彼は文学史に名を刻んだといえる◆教職への希望も持っていたというから、あるいは故郷で教壇に立ち、平穏な人生を送っていたかもしれない。「先生も昔は名のある歌人やったんや」なんて生徒に自慢しながら◆コロナ禍で若者の自殺が増えていると聞く。深刻な悩みを抱えた人に軽々しい慰めは言えないが、それでも生きてほしい。死ぬほどつらい時に誰かを頼ることは、決して「不潔」ではない◆青くさいままの岸上の遺影を前に思う。伝説の夭折歌人じゃなく、平凡な81歳のあなたに会いたかった。もちろん握手の前には、アルコールで手を清潔にして。2020・12・28

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