正平調

時計2021/02/08

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ちょうど40年前の2月、映画監督の浦山桐郎が初めて故郷・相生で講演した。相生市民会館を埋めた聴衆を前に、やにわに黒板に向かって海岸部の地図を描き宣言した。「相生湾は母なる子宮です」◆直後に出た市の広報には、石川啄木の歌をもじって記す。「ふるさとの海にむかいていうことなし」。55年に満たない生涯の晩年には、しきりに古里への思いを語った◆桐郎の歩みを振り返ると、相生への感情は単純ではなかったろうと思う。生母は彼を産んですぐに亡くなる。造船所に勤めた父も後年、自宅近くの崖から飛び降り命を絶つ。それでも湧き出る思慕は熱く切ない◆代表作「キューポラのある街」に加え、「太陽の子・てだのふあ」が忘れ難い。原作は灰谷健次郎。沖縄戦の傷を抱えながら神戸に暮らす家族の物語だ。主人公ふうちゃんのお父さんは苦悩の末に、自死を選ぶ◆映画ではお父さんの最期の場所は姫路の海岸に変わっている。沖縄での葬儀の後のシーンで、娘は「ほんとのことを言うてほしい!お父さん」と号泣する。ふうちゃんと桐郎。残された者の心からの叫びだろう◆長引くコロナ禍で、自死する人が増えている。事情はさまざまで軽々なことは言えないが、桐郎のメッセージが力を持たないだろうか。2021・2・8

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