正平調

時計2021/02/16

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作家の石牟礼道子さんに〈生皮(なまかわ)の裂けし古木に花蕾〉という句がある。句集には「二〇一一年春」と記されている。東日本大震災の起こった春に裂けたのは、海底や大地ばかりでない◆生と死に引き裂かれた家族がいる。穏やかな時の流れも断ち切られた。「3・11」から間もなく10年。石牟礼さんの句のように春の蕾(つぼみ)がようやく見えてきた人もあれば、「まだまだ」という方もあるに違いない◆節目の日が近づくにつれて被災地にどこか厳かな空気が漂うのは、亡き人の存在をいつも以上に近いところで感じるからだろう。そんな空気をまたも烈震が切り裂く。震度6強を観測した東北で被害が広がった◆石灯籠が崩れ、無人の車を押しつぶす瞬間映像をテレビで見た。建物の外壁が倒れて道をふさいだところもある。ぞっとする。発生が深夜ではなく昼だったら、災害はもっと恐ろしい別の顔を見せていただろう◆東日本大震災の余震という。「10年前を思い出した」という声がやはり聞かれた。つらい記憶が思わぬ形でよみがえる。そのことで感情が揺さぶられ、ふさがりかけた心の傷がまた開きはしないかと気にかかる◆床に砕け散った食器をかたづける。目に涙をためて、何度もため息をつく被災者の姿がたまらなく、つらい。2021・2・16

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