正平調

時計2021/04/25

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今年もその場に立ってみる。えぐられた壁、ねじれた鉄骨、流れる線香の煙、ささげられた美しい花々、傍らのカーブを過ぎていく電車のきしみ音。尼崎JR脱線事故の現場である◆乗客の中に知人がいたわけではない。あの日の悲しい光景が忘れられないからであり、肉親を失ったり大けがで人生の夢が砕けたりした人の無念が、今も胸を突くからだ。もう一つ加えれば、あの字を見たいから◆ダイコンの花でかたどった「命」の文字だ。現場近くの畑の持ち主が「事故を忘れないで」と植えてきた。畑を転用するので、今年で終わると聞いた。白い花を歩道から見ながら、過ぎてきた時の長さを思う◆現場にある慰霊施設で、訪れた人からの短いメッセージを読んだ。「無理はありませんか」と問いかける人がいた。小さな無理でも、重ねていったらいつか破綻してしまう。JR西日本への呼びかけなのだろうか◆関西へ来れば、ここへ足を運ぶという書き込みもある。「安全への意識」を見つめ直したいのだと。常識だと思っていることに過信はないか、自分が負うべき責任を他人に任せてはいないか、と省みるために◆惨事から、今日で16年になる。時は流れる。でも、立ちどまる日、振り返る日、祈る日、問う日、確かめる日。2021・4・25

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