正平調

時計2021/05/09

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先ごろ亡くなった脚本家橋田寿賀子さんは、母のことがずっとうっとうしかったそうだ。一人娘の人生について、何かと口をはさみたがったからだ◆念願がかなって松竹脚本部へ入った後、母が撮影所の所長へ「不合格にしてほしい」と手紙を送っていたことを知った。男社会で苦労すると思ったようだ。大げんかになり、橋田さんは家を飛び出した◆30歳のとき、その母が亡くなった。病室の片づけで布団をめくると、娘を紹介する記事などがたくさん出てきた。あれほど反対したのに、看護師には娘の自慢話をしていたと知って、橋田さんは声を上げて泣いた◆1年前の週刊文春「家の履歴書」で読んだ話だ。仕事のことは分かってもらえないと思っていたのに、娘が載っている新聞や雑誌の記事を切り抜いていた。母の深い情愛が、一瞬にして心のこわばりを解いた◆万葉集にある一首。〈旅人の 宿りせむ野に 霜降らば わが子羽ぐくめ 天(あめ)の鶴群(たづむら)〉。遣唐使となった息子が大陸へ渡った。荒野で寒さをどうしのいでいるのだろう。鶴よ、その羽でわが子を温めてと母は祈る◆それぞれの場で頑張る子を誇りに思いながら、心配は尽きない。疲れた体に温かい羽をと願う。コロナ禍、そんな姿を思い浮かべる、きょうは母の日。2021・5・9

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