正平調

時計2021/05/19

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「クヌギ酒場」。ふらりと立ち寄りたくなるような呼び方を、河合雅雄さんの自伝的小説「少年動物誌」に学んだ。オオムラサキ、クワガタムシ、スミナガシ…。客はみな森の虫である◆甘いクヌギの樹液をいただきに虫たちが集うその酒場のありかを、虫好きの子なら知っている。河合さんのふるさと丹波篠山の自然を舞台にした「動物誌」を読んで、昆虫少年の昔を懐かしんだ大人は多かろう◆新種かもしれんと喜び勇んでめくった図鑑に「普通種」とあり、思わず投げ飛ばしそうになった話。悪臭を放つ虫を集め、憎らしい連中をやっつけてやろうと画策する「屁(へ)こき軍団」の話。どれも、おもしろい◆「サル学」研究の権威といわれながら、その目線はいつも子どもたちと同じ高さにあったのだろう。難しい問題を難しく語るばかりが学問ではあるまい。「自然と共生する」とはどういうことか。それは心底から自然を好きになることだと、自らの体験や平明な言葉でもって伝え続けた人である◆病弱であまり学校に行けず、虫や鳥、魚が友だちだったと回想にある。丹波と世界の森をめぐり、学究の森を切り開いた97年の生涯を思うとき、訃報に接した今もどこかの森を歩いておられる気がしてならない◆友だちも一緒だろう。2021・5・19

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