正平調

時計2021/06/18

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雨上がりの夕暮れ時、作家の内田百●(ひゃっけん)はお店を訪ねていって、ビールを口にした。「何本でも飲ませるのかと思つたらお一人二本限りなどと戦争中から聞きあきた挨拶也(あいさつなり)」。1946(昭和21)年4月4日の日記に書いている◆終戦からまだ8カ月、物資欠乏の折にめげず、日ごと酒を飲む作家の姿が日記からはうかがえるのだが、読後の感想はコロナ禍の前と後とでは大きく違う。一人二本? 上等さ-いまならそう毒づく方もあろう◆10都道府県に出されていた緊急事態宣言が沖縄を除いて解除される。それに伴って兵庫などでは、飲食店でのお酒の提供が制限付きながら認められることになるという◆ノンアルコール飲料を出したり、お弁当を売ったり、休業に踏み切ったりと日々をしのいできた店から「限界」の声が聞かれて久しい。「やれやれ」というよりは「まだまだ」の焦燥のほうが大きいに違いない◆百●の日記を読んでいたら、ドキリとする記述があった。「一人二本」にむくれて間もない4月13日の昼、混んだ電車に乗ってひと言。「人ごみに揉(も)まれると発疹窒扶斯(チフス)こはし」。感染症が流行していたらしい◆酒は飲みたし、されど、コロナは怖し。長らく口にしていなかった「取りあえず、ビール」もまずは小声で。2021・6・18

(注)●は間の異字体、「間」の「日」が「月」

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