正平調

時計2021/07/28

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明石市の小林宝二(たかじ)さん(89)は61年前のあの日を忘れない。結婚して間もないころだ。妻の喜美子さん(88)が身ごもった。「男の子かな、女の子かな、どっちでもいいなぁ」。飛び上がるほど喜んだ◆だが翌日、子どもは流産させられる。喜美子さんは何も分からないまま病院の内診台に寝かされ、麻酔をかけられた。知らないうちに不妊手術までされた。2人の未来を奪ったのが「国」と聞けば、あなたはどう思うか◆障害のある人は、「不良な子孫」になる子どもを産んではいけない。そんなことを定めた法律があった。優生保護法という。1996年に改正されたが、48年間で約1万6500人が強制的に不妊手術を受けた◆聴覚障害がある小林さん夫婦をはじめ、25人が国を相手に訴訟を起こした。3件の判決は旧法を憲法違反と断じたのに、手術から20年が過ぎて「請求権は消滅した」とした。深い悲しみは心と体に刻まれたままというのに◆兵庫訴訟の原告は5人。弁護団らがまとめた冊子に、全員の陳述書が掲載されている。ページを繰る手が何度も止まった。得体(えたい)の知れない感情が腹の底からわき上がる。怒り、だけに収まらない◆判決は8月3日。法は人なり、という。人の世を信じることができる判決を期待したい。2021・7・28

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