正平調

時計2021/09/11

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日中戦争のさなか、ある心中事件が起きた。このほど亡くなった歴史学者の色川大吉さんはそのころ中学生だったが、新聞に載った小さな記事を見逃さなかった。18歳の姉と幼い弟2人が体を結び合って川に身を投げたという◆弟の1人は病身だった。色川さんの回想にある。戦争だ、団結だと息巻きながら「なぜこのような小さな姉弟を助けることができないのか、わたしは何日も悲しんだ」◆コロナ禍のいまはどうだろう。ひとり思いつめ、自ら命を絶つ人が増えているとの記事を読むたび、かつての色川少年に似た自問が胸をよぎる。先進国だ、絆だとことあるごとに口にしてきたのではなかったか◆入院がかなわず、救えるはずの命が救えないのも「なぜ」である。「医療体制をなかなか確保できなかった」とは近く退陣する菅首相の反省の弁だが、いまさらそんなことを言われたとて国民はどうしたらいい◆歴史は偉い人だけではつくれない、社会を底辺で支える名もない人たちに目を向けよ-色川さんはそう唱え、個人史や民衆史から社会をとらえようとした。ならば未来の歴史家が2021年の市民の日記に触れたとき、そこに何を見、何を感じるだろう◆緊急事態宣言がまた延びる。ため息だらけの日記がまた重くなる。2021・9・11

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