正平調

時計2021/11/05

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都市の魅力を語ってこれほどの賛辞もない。「神戸に転勤してきたサラリーマンは出世を忘れる」。昔の評判を、精神科医の中井久夫さんが述懐していた(「戦争と平和 ある観察」)◆今の神戸はどうかしら。神戸市長選で3選を果たした久元喜造(きぞう)さんが「住みやすくて、わくわくする街に」と語っていたのを聞いて、中井さんの“昔話”を思い出した◆随筆家の江國滋さんにも、神戸賛歌と呼べそうな紀行エッセーがある。新幹線の新神戸駅が完成する前というから、これもまたかなり昔の話になるが、街をゆく若い恋人たち、家族連れの姿が目を引いたそうだ◆だれもがはつらつ、のびのびとして、余暇を楽しむにしても東京人のようにガツガツしたところがない。つまり、心が「ゆたかなんだよ」(「阿呆(あほう)旅行」)。ちょっとこそばゆいが、実際にそう見えたのだろう◆逆にいえば、街の景観がどれだけ美しくとも、行き交う市民が渋い顔であれば心は弾まない。今は「ゆたかさ」の実感も人それぞれだから、なおのこと一人一人の暮らしに目を配る、温かい市政であってほしい◆夕暮れの埠頭(ふとう)でゆったり釣り糸を垂らす神戸人を見て、この街はまぶしいと江國さんは書いた。昔も今も、そこに生きる人たちの内面から街は輝く。2021・11・5

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