正平調

時計2021/11/07

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数日前の発言欄で、加古川市の女性の一文を読む。稲刈りが終わり、わらくずなどが残る田んぼの匂いが好きだと書く。懐かしさがこみ上げ、鼻の奥に眠っていた記憶がよみがえった◆稲わら。じっくりと干し、脱穀したわらは穏やかな匂いがする。生ぐささが薄れ、さわやかな香ばしさを漂わせる。小屋に積み上げられた稲わらにもぐりこむと、気持ちがやさしくなっていくようにも思えた◆秋が深まると、作家稲葉真弓さんが思い出すのも稲わらの匂いという。「陽(ひ)にさらされた藁(わら)の香の清潔なこと」、寝そべったときの「ちくちくと背中を刺す茎のくすぐったさ」。深くうなずきながら読んでしまう◆詩人で俳人、木下夕爾(ゆうじ)さんは広島県福山市生まれで、故郷でずっと薬局を営んだ。合間に田畑の小道を歩いたのだろう。〈今年藁ことしの秋のにほひけり〉の句が残る。今年藁とはその年の新しいわらのこと◆その〈秋のにほひ〉に時代の風が吹き募る。牛の飼料などに使われる稲わらは国内だけでまかなえない。25%が輸入と、農水省の資料にある。肝心のコメにしても人口減の影が覆う。コロナ禍もあって外食がふるわず、価格が落ちた。主食はあえいでいる◆〈秋のにほひ〉は大丈夫か。心配しながら季節は過ぎ、もう立冬。2021・11・7

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