正平調

時計2021/11/23

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父を亡くした学生時代の話を作家の宮本輝さんが書いている。「お母ちゃんが働くさかい、おまえは大船に乗った気でおりなはれ」。当時55歳の母親はそう言って、ホテルに職を得た◆従業員食堂で重たい鍋を持ち、80人分のカレーをつくり、オムレツを焼く。10年間、猛烈に働いたそうだ。あのときの母がいなかったら今の私はなかったと、宮本さんの青春エッセー集「二十歳の火影(ほかげ)」にある◆家族のため。お客のため。働くとは傍(はた)を楽(らく)にすることだとよく言われるが、追いこまれた状況であればあるほど“傍楽(はたらく)”人たちの存在は身にしみてありがたい。きょうはコロナ禍で2度目の勤労感謝の日である◆大学入試に挑む高校生の言葉を1月の本紙で読んだ。「授業時間が足りない中で先生たちが必死に指導してくれた」。感謝している、と。受験が不利にならぬよう走り回った先生の姿を、教え子たちは忘れまい◆もう一つ、「神戸新聞文芸」より特選の短歌。〈品書に「緊急事態ラーメン」って目が離せない居酒屋の日々〉(岸本良和)。負けてなるものか-湯気立つスープはお客さんの心までぐっと熱くしたに違いない◆「春にならん冬はこれまでいっぺんもなかったんや」が宮本さんの母上の口癖だったそう。今は苦しくとも。2021・11・23

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