正平調

時計2021/12/28

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病院で人工呼吸器をつけて生きる幼い娘を家に迎えたくて、父は会社を辞め、自宅を売って500万円で高価な機器を買いそろえた。難病の子はずっと病院暮らし。30年ほど前のことだ◆「寝たきりのパイオニア」と呼ばれた平本歩さんの物語「あゆみの道」を本紙阪神版で読んだ。〈おとうさんと、おかあさんと、あえないの、いやだった/おそと、そら、たいようみたかった/おともだちがいなかった〉。声が出せない歩さんが筆談で伝えた◆小学校の教員をしていた妻に家計は任せ、父は娘と二人三脚の生活を送る。30分に1回は痰(たん)の吸引が必要だからだ。小中高と毎日付き添い、普通学級で通した。「自分を犠牲にして」と周囲には映ったかもしれない。だが娘の命を社会に生かすことが天命と感じたのだろう。これこそがやりがいのある仕事だと◆実際、社会は動く。鉄道や学校など2人が進む先々にエレベーターができた。医療ケアが必要な子に自治体がしっかり対応するよう法律も改正された◆父が亡くなる直前に残した言葉がある。〈歩へ 自立に向かって 邁進(まいしん)せよ〉。歩さんはその通りに生き、今年35歳の生涯を閉じた。歩さんが登った険しい山の後に道ができた◆その道を私たちが歩き、未来の子どもたちが歩む。2021・12・28

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