うさんくさいメールに日々悩まされたことがある。教わった対策を重ねながら、よく思ったものだ。見えないどこかで、誰かが、じっと獲物を待っている。なんと腹立たしいことかと◆徳島県つるぎ町は自然豊かな山あいにある。そこに住む皆さんにとっては、腹立たしさはもちろんのこと、薄気味悪さを肌で感じる日々だっただろう。昨年秋、町立の病院が突然、サイバー攻撃を受けたのだ◆勝手に動いたプリンターが英語の脅迫文を印刷したというからぞっとする。電子カルテを復旧してほしければ金をという要求を拒み、セキュリティー会社の協力で窮地を脱した。通常診療を再開できたのが一昨日◆サイバー攻撃という文字を目にする機会が増えてきた。東京五輪・パラリンピックの公式サイトなどには4億5千万回というし、地域の命と健康を守る医療機関までが標的になった。事態はとても深刻である◆日本人宇宙飛行士の月着陸をと政府が言い始めた。そのニュースを読み、コラムニスト山本夏彦さんの一文を思い出す。米国の月面着陸に世界が沸いたころだ。月はながめるものなのに「何用あって月世界へ?」◆今ならこうなる。何用あって、日本が月世界へ? 問題は地上にあり。攻撃から暮らしを守る術(すべ)を考えよう。2022・1・6
