正平調

時計2022/01/22

  • 印刷

眼科で目にした涙腺の図のことを、小川洋子さんが「涙のとおり道」というエッセーに書いていた。それは目尻のすぐ近くにあって、細い管がぐるぐるとからまったような形に見えた◆小川さんは思ったそうだ。涙はこんなにも入り組んだ道を通って、はるばるやって来るのか。だとしたら「井戸の底では冷たい涙が、こうして長い道のりを巡っている間に、温められる」、きっとそうだろうと◆家出した少女を保護し、警察から感謝状を贈られた高校3年の女子生徒の話を本紙明石版で読んだ。足取りの重そうな制服姿の女子中学生が気になり「どこに行くの」と声をかけたら、彼女は泣き出したという◆凍えていた少女の心が優しい声に触れ、ふっとほぐれたのかもしれない。「涙のとおり道」を通ってほおにこぼれ落ちたもの、そのぬくもりを思う。家出を打ち明けた少女に高校生は言った。「一緒に帰ろうか」◆相手を思いやる気持ちが記事から伝わってきて、何だかこちらの目尻までじんわりとぬくもったよう。俵万智さんの一首が思い出された。〈「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ〉◆せめて今、心の距離くらいは「密」でありたい。見知らぬ少女に寄り添った女子高校生の行動に教えられる。2022・1・22

正平調の最新
もっと見る
 

天気(5月19日)

  • 25℃
  • 16℃
  • 0%

  • 30℃
  • 11℃
  • 0%

  • 27℃
  • 15℃
  • 0%

  • 29℃
  • 14℃
  • 0%

お知らせ