正平調

時計2022/01/24

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作家中村真一郎さんは40歳を過ぎたころ、深刻な心の病を抱えた。もともと孤独に悩んでいたところに、妻が幼い娘を残して自死した。「一生の仕事が終わる」ほどの危機だったが、ある方法で脱する◆中村さんは、江戸時代の先人たちの伝記を来る日も来る日も読んだ。一人は漢詩人で歴史家の頼山陽(らいさんよう)。詳細な記録をひもとくうち、奔放に生きた山陽も精神の危機に苦しんでいたと知る。時空を超えた共感が名著「頼山陽とその時代」を生んだ◆姫路市の元教師瀬川健二郎さんは、江戸中期の随筆家神沢杜口(かんざわとこう)にほれ込む。その大著を読み解いた「遊筆の朋(とも) 翁草(おきなぐさ)」は、自身の経験も交えた深い考察が評価され、昨年、姫路地方文化団体連合協議会の黒川録朗賞を受けた◆杜口とは「日本随筆大成」を通じて運命的に出会う。妻に先立たれて独り暮らし、おまけに元公務員という境遇も同じ。3年かけて200巻を読み込み、感情や考え方、性格まで分かるようになった◆杜口にも自分のことを知ってほしい。瀬川さんは若い頃から人間関係に苦しんだこと、アルコールに依存した過去をつづる。二百数十年前の友には包み隠さず告白できた◆書物を通じ、いにしえの先達と深く交わる。精神の貴さを中村さんと瀬川さんは教えてくれる。2022・1・24

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