正平調

時計2022/04/21

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砂浜でヤシの実を見つけたのは、民俗学者の柳田國男だった。その話を聞いた島崎藤村は詩にした。それが名作「椰子(ヤシ)の実」。黒潮が運んだ物語に曲がつき、後に愛唱歌となっていく◆海洋冒険家堀江謙一さんは口ずさんだ一人のようだ。33年前、世界最小ヨットでの太平洋横断に挑んだとき、支援者との無線交信の中でこんな話をしていた。「ヤシの実など郷愁を誘うものは見えません」と◆では、太平洋で何が見えたのだろう。頭上では、変わらずに満天の星が輝いている。でも洋上を漂うのは、コールタールの塊であり、捨てられたプラスチック製品だった◆堀江さんはその27年前、初めて太平洋を渡り切ったときのことも語った。米国近海でも艇の周りに魚が集まったのにと。そんな光景は昔話となり、とても汚れてしまった。冒険家の目に映る、これが海の今昔◆プラスチックごみが増えた。政府はプラスチック資源循環促進法で減らそうとするが、欧州に比べてまだ緩い、との声を聞く。手をこまねいていたら、厄介なごみを押しつけられた海の悲鳴がますます高まりそう◆83歳になる堀江さんは今、愛艇を操って、米国から西宮へと進む最中だ。尋ねてみたくなる。大海原でヤシの実と出合いましたか。海は美しいですか。2022・4・21

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