正平調

時計2022/05/04

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旅に出れば作家の旧居や記念館を訪れる。作品の舞台となった風土が身近に感じられ、書斎のたたずまいは人となりそのものだ。書棚に並ぶ本の数々、愛用した文房具など興味は尽きない◆奈良市高畑町にある志賀直哉旧居は作家が1929(昭和4)年から38年まで暮らし、ここで名作「暗夜行路」を完成させた。自身がこだわって設計しただけに、没後半世紀となっても生きた証しが実感できる◆「よかったら飯食っていきたまえ」。瀧井孝作、尾崎一雄、小林秀雄、武者小路実篤…。志賀を慕う文人にとどまらず、一面識程度の文学青年でも陶工でも人の感じさえ悪くなければ、気軽に声をかけたという◆邸宅は見事に修復保存されている。数寄屋造りを基調としつつ洋式や中国式の要素も取り入れた。目を見張るのは15畳のサンルームだ。特注の瓦を敷き詰め、天井は化粧小屋造り。90余年の時をへても「高畑サロン」と呼ばれたざわめきが聞こえてくる◆88年の生涯で23回も引っ越しをした文豪が、終生愛したのが奈良だった。東京に移る際に書いた文章が残る。「今の奈良は昔の都の一部分に過ぎないが、名画の残欠が美しいやうに美しい」。最大の賛辞だろう◆この大型連休、名作を手にゆっくりと歩く近場の旅もいい。2022・5・4

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